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妊娠中のハーブ摂取(米国産科婦人科学会より)

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  • 投稿の最終変更日:2022-03-24
  • 投稿カテゴリー:blog

受講生の方から「[妊娠中のハーブ製品の使用は母子ともに安全か?]という記事が出ましたが、どう思いますか?」という質問をいただきました。

ちょうど、私もその元となった米国産科婦人科学会の『Obstetrics & Gynecology』を読んでいたところでしたので、シェアしていきたいと思います。

ご質問のあった記事はこちら↓。

https://srss.healthdayjapan.com/2019/04/27/妊娠中のハーブ製品の使用は母子ともに安全か?/

リンク先を見ると、

74件の研究論文のレビューから、一部のハーブ製品の使用で早産や帝王切開などの妊娠合併症リスクが高まる可能性があることが示された。

と最初に書かれています。

  • アーモンドオイルを皮膚に塗布したら、早産のリスクが2倍増
  • ラズベリーリーフを経口摂取したら、帝王切開率が3.5倍増
  • リコリスのキャンディで早産のリスクが増える
  • アフリカのmwanaphepo(伝統的なハーブ)で帝王切開率、新生児死亡がわずかに上昇

などが挙げられていました。

トリートメントでスイートアーモンドオイルを使用している方などはとても不安になりますよね。

私は日本語に翻訳された記事は、訳者の翻訳バイアスがかかることがあるので、元記事を読むようにしています。

私が読んでいたのは、アメリカの産科婦人科学会の学会誌 『Obstetrics & Gynecology』(通称 The Green Journal )2019年5月号に掲載された記事。妊娠中のハーブ使用について発表された74件の研究をまとめた、システマチックレビューです。

Herbal Medicinal Product Use During Pregnancy and the Postnatal Period (Obstetrics & Gynecology. 133(5):920-932, May 2019)

上記4点のハーブだけでなく、カモミールによる早産や低出生の増加、ジンジャーで赤ちゃんの頭囲減少、フェンネル、クミン、またアーユルベーダで妊産婦に使われる3種の薬草の肝毒性など、いろいろな種類についてのstudyが書かれていました。

そのレビューを受けて、米国のメディカルジャーナリストの方が欧米の著名なドクターにインタビューした記事の日本語訳がご質問の記事。そして、その日本語訳の元になっている英文の記事がこちら↓。(だんだん説明がややこしーっ!)

Herbals in Pregnancy May Endanger Mom, Baby

では、以下、興味のある2つのハーブを取り上げて、それに対するドクターの意見をこの記事↑から拾っていきたいと思います。(ついでに私の意見も交えていきます)

<アーモンドオイル>

アーモンドオイル(マッサージでビターを使うことはないので、私たちに馴染み深いスイートアーモンドオイルを指すでしょう)については、2件のstudyで、

「妊娠後期に妊娠線予防のために腹部にマッサージをしていた妊婦が、しなかった妊婦に比べて、早産率が2倍高かった」

とあります。

これに対して、英国Royal Aberdeen Children’s Hospitalの上級研究員 Dr. James McLay は、

On one hand, he noted, fatty acids — or contaminants in the oil — could theoretically be to blame. “Or,” McLay added, “the study may have not been designed appropriately and obtained a false-positive result.”

”オイルの中の脂肪酸や不純物が早産を引き起こす可能性が理論的にはあるかもしれないけど、本当は研究方法がちゃんとしてないから変な結果になったんじゃないの。”(←超バイアスのかかった意訳)

とありました。

これと同じことを2015年に私もブログに書いているので、なんで理論的にありえるのかは省きますが、ω-6脂肪酸がもっと高濃度で含まれる植物オイルが他にあるにも関わらず、スイートアーモンドが取り上げられているところがよく分からないのですが、

いずれにせよ、McLay先生のおっしゃる通り、私もエビデンスレベルとしては低いと思っています。

<ラズベリーリーフ>

「陣痛中のラズベリーリーフの経口摂取で、帝王切開率が3.5倍増えた」「低血糖の誘発が1件のstudyから報告された」

とあります。

ただ、Discussion の中で、

The use of raspberry leaf has been associated with cesarean delivery by 3.5-fold; however, this study involved only 34 exposed women. Raspberry leaf has also been associated with hypoglycemia when used with insulin.

”ラズベリーリーフで帝王切開増えたけど、この研究は34人しか対象としていないよ。(人数が少なすぎる)あと、インスリンと併用すると低血糖引き起こすよ。”(意訳)

米国George Washington University School of Medicine の産婦人科教授で、催奇形性情報の専門家でもある Dr. Anthony Scialli は、

“This (review) drives home the point that so little is known about herbals in terms of effectiveness and safety,” McLay said.

Dr. James McLay は、

Most studies on herbal products during pregnancy are not large enough, or well-designed enough, to offer good evidence one way or the other.

お二人とも、妊娠とハーブの関連性のstudy は不十分であるとの指摘。(超超意訳)

で、ようやくここからがこの記事の本質なのですが、

日本人は元来、医食同源の考えの元、健康のためにはまず食事から栄養を摂取しようとしてきました。しかし、欧米は、サプリメントやハーブで手軽に栄養を摂取する習慣があります。

レビューにもありますが、妊娠中もその習慣は続いて、12-81%の妊婦がハーブやサプリメントを、「健康のため」「予防のため」という理由で摂取しているそうです。

それに対して、 The Green Journal も、両ドクターも、妊娠中に安易にハーブを摂取することに警告をしています。天然のものだから安全ではなく、ハーブにも多くのケミカルが含まれている。その成分は薬と同様に体に作用して影響を与えていき、副作用をもたらすこともある。したがってもっと慎重に摂取をしないといけない、と。

このご意見には100%同意しかありません。

私なりのコンルクージョンとしては、妊娠中のハーブ摂取は、危険とは言えないけれど、安全とも言い切れない。したがって、摂取量、品質、妊娠の期間などをしっかりと考えて摂取する(ように、セラピストであるならアドバイスする)、という感じでしょうか。

マタニティアロマトリートメント講座では、妊娠中の精油の使用について、国内外の研究文献を数多く精査してお伝えしています。