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不育症の方へのマタニティトリートメント

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  • 投稿の最終変更日:2022-04-16
  • 投稿カテゴリー:blog

妊娠はするけれど、お腹の中で赤ちゃんが育たなくて流産・死産を繰り返してしまう方がいます。そのような状態を「不育症」と言います。

定義としては、

日本産婦人科学会
流産を2回以上繰り返すと「反復流産」、3回以上連続して流産すると「習慣流産」

厚生労働科学研究班
妊娠はするけれど、流産・死産・新生児死亡などを繰り返して結果的に児(赤ちゃん)を得られない状態のこと

何回以上繰り返したら「不育症」となるかという定義は曖昧で、また化学流産(妊娠陽性反応は出たけれど次の月経がきてしまった)は含まれるかも議論中のようですが、4.2%の頻度で起こるという報告があります。(*1)

 では、この「不育症(習慣流産)」の方に、私たちは何ができるでしょうか。それともトリートメント自体禁忌にした方がよいでしょうか。

それを考えるには、「不育症」となる「原因」を知る必要があります。(現在はまだ、不育症の原因を断定するには至っていない研究段階のようで、「リスク因子」という言い方をしています。「原因とは言えないけど、リスクは高いですよ」という意味ですね。)

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<主な不育症のリスク因子 (*2)>

子宮奇形 (7.8%)・・先天的に子宮の形が通常とは異なる形を持つ場合

American Fertility Societyより

内分泌異常 (6.8%)・・甲状腺機能低下などホルモン分泌に異常がある

染色体異常 (4.6%)・・受精卵に偶然起きた染色体異常ではなく、夫婦のどちらかに染色体の構造異常がある場合

血液凝固異常(25%)・・抗リン脂質抗体、第XII因子欠乏など血液が凝固しやすい

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この中で、私たちがトリートメントを行うにあたって、特に注意が必要なケースは、「血液凝固異常」です。血の塊(血栓)が動静脈血管に形成しやすい状態にあります。もともと妊娠中、血栓のリスクは5倍になると言われていますが、この因子を持っている場合はさらに跳ね上がります。高齢や肥満の場合はもっと上がります。

血栓のリスクが高いと、肺の血管を閉塞する「肺血栓塞栓症」という、非常に重篤な病態につながる危険性があります。肺血栓塞栓症は妊婦の死亡の主な原因の一つです。

もちろん、血液凝固異常の方すべてに、血栓が起こるわけではありません。起こらないように血液凝固を防ぐ薬を服用します。そして血栓「予防」のためにはトリートメントはとても有効であります。

問題は、その血液凝固異常のクライアントが、血栓症発症しているか否か、私たちが判断できる知識と技術があるのか、という点です。無自覚症状の血栓症もあり、ご本人すら気づいていない場合もあります。

「トリートメントの前に主治医の許可を得てください」で、すべて済ませてしまうのは、セラピストとしての責任の欠如であり、万が一不幸な事故が起きてしまった場合は、医師ではなく施術したセラピストに責任が問われます。(当然ですが)

よって、不育症が血液凝固異常因子によるものなら、私たち非医療者の立場であるセラピストは禁忌にした方がよいと思います。

 

しかし反対に、トリートメントが有効と思われる不育症の方もいらっしゃいます。

上のリスク因子に挙げられていないケース、「原因不明」の方です。実はこの原因不明が不育症の65%(抗リン脂質抗体陽性の原因不明を除くと43%)という大多数を占めています。(下のグラフの濃い水色の部分)

Fuiku-Labo より

この原因不明の方々は、積極的な治療法はなく精神的支援が主となります。(*3)次の妊娠に向けて前向きな気持ちになることが1番の治療となります。

ぜひ、このタイプの方にはリラクゼーション、気分転換を目的としたトリートメントをおこなってください。(妊娠されていたら20週以降に入ってからと、当スクールでは決めています)

 

というわけでコンクルージョンです。

Q. 不育症の方にトリートメントは有効か、または禁忌か?

A. 不育症自体は病気ではないので、その因子から判断する。

不育症のクライアントがいらしたとき、その方のリスク因子が、血液凝固異常なのか否か、トリートメント禁忌の判断方法は、マタニティアロマトリートメント講座でお伝えしています。(すみません)

<参考文献>
*1:厚生研究班の研究成果を基にした不育症管理に関する提言 http://fuiku.jp/common/teigen002.pdf
*2:不育症のリスク因子 Fuiku Labo 国立研究開発医療法人日本研究医療開発機構 http://fuiku.jp/fuiku/risk.html
*3 HUMAN+改訂第2版,89,日本産婦人科学会