グレープフルーツ、レモン、オレンジ、etc
柑橘類は子どもの頃からなじみがある香りなので、このすっきり爽やかな芳香は精油でも好まれる方が多いですよね。
古来より日本では、「強い濃厚な香り」よりも「残り香」などに風情を感じていたようで、それは現代のフレグランス嗜好調査でも、柑橘系、グリーン系、フルーツ系など、爽やかな香りが好まれるという日本独自の香り文化があるようです。
さて、前置きはさておき、
このとてもポピュラーな柑橘の精油が、実は高血圧症のクライアントにはちょっとやっかいなものだったりします。
10分間のグレープフルーツ精油の吸入はラットで血圧を上昇させた(Shen et al 2005, Tanida et al 2005)
ヒトを対象とした試験で、3−7分吸入した後、収縮期血圧をわずかに上昇させた(Haze et al 2002)
どちらの研究も、グレープフルーツ精油の香りを嗅いだことで、血圧が上がったという結果になりました。トリートメントではなく芳香で、ということです。
これは、グレープフルーツの主成分であるd-リモネンに起因するようで、となると、ほとんどの柑橘系の精油が当てはまることになります。
よって、グレープフルーツ、オレンジ、ベルガモット、レモン、マンダリンなど柑橘系精油は、血圧の高めな方には「吸入(芳香)」では使わない方が無難です。ただし、有害作用と呼ぶほどのエビデンスが確立されているわけでもないので、「第一選択にはしない」ぐらいの柔軟な思考がベターです。
しかし!
この柑橘系精油のさらにtrickyなところは、d-リモネンがトリートメントなどの経皮吸収では、血圧を下げるという、真逆の働きをすることです。
もう使ったほうがいいのか、使わないほうがいいのか、何番目に選んだらいいのか・・(笑)
新宿御苑の大温室にあったレモンの木
私の考えとしては、
伏臥位になることができるクライアントなら、背面のトリートメントで使用するというアイデアはありかな、と思います。
では、伏臥位になれない妊婦さん、マタニティトリートメントではどうしましょう?
妊婦さんの場合、血圧が高め方には使わない!
やはり、これが一番ではないでしょうか。高血圧症と診断されている方はトリートメント自体を禁忌とします。
では、「血圧が高め」って、どのように見極めることができるでしょう?
<参考文献>
ロバートティスランド 精油の安全性ガイド第2版 フレグラントジャーナル社 P170-176
(一部のCa拮抗薬の降圧剤とグレープフルーツは、薬物相互作用があるので、禁忌と言われていますが、消化器官で影響するので、精油の場合は飲用しない限りは問題ないと思います。)