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無痛分娩についてどう思いますか

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  • 投稿の最終変更日:2022-03-24
  • 投稿カテゴリー:blog

この2年のコロナ禍では、感染予防の観点から、多くの産婦人科・病院でパートナー(夫)の立ち会いが制限されています。そんな状況と時代の変化も加わり、現在、無痛分娩での出産を選択する妊婦さんがとても増えています。

どのぐらい増えているのかというと、
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●日本の無痛分娩普及率

2008年:2.6%
2016年:6.1%
2021年:??

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まだコロナ禍での統計の推移がでていないので、はっきりした数字は分かりませんが、おそらく10%ぐらいまでアップしたのではないか、とのこと(*1)。
ただコロナ以前から、山王病院(及び山王バースセンター)のように無痛分娩が80-90%以上を占める施設もあります(*2)。逆に無痛分娩をやっている施設がない地域もあるので、地域差はかなり大きいと思われます。

●全国無痛分娩施設検索 →こちら

欧米と比べてこの10%(仮)という普及率は多いとは言えませんが、実は実際の症例数で言うと2016年の時点ですでに世界12位だとのこと!(*1)なので、今ならもっとあがっているでしょう。

このような現状から、産前産後のトリートメントをおこなうセラピストとしては、無痛分娩のこともきちんと知っておきたいところです。やみくもに否定したり共感したりしないために。

ここからはこれまで無痛分娩について勉強してきた中での私の考えです。

無痛分娩は、不安障害や妊娠高血圧症の方にはとても有効なお産であることは認められていますが、それ以外の、例えぴんぴんと健康な妊婦さんであってもその方が「痛いのはイヤ」と思うなら、それは無痛を選ぶ正当な理由になると思っています。
お産は癌性疼痛よりもはるかに痛いと言われているのですから。

ただ多くの妊婦さんが不安なのは、無痛分娩に伴うリスクですよね。数年前に立て続いた痛ましい事故の記憶もまだ新しいです。

まず赤ちゃんに麻酔が回ってしまうことは心配ないようです。
無痛分娩の麻酔は脊柱の「硬膜の外の空間=硬膜外腔」に入ります。硬膜にも血管はありますが、静脈麻酔のように血管内に直接入れるわけではないので、麻酔薬が胎盤を通って赤ちゃんにまで回って悪い影響を及ぼす心配はないことがわかっています。

ただし、産婦さんへのリスクは軽いものから重症なものまで考えられます。それに伴う赤ちゃんへの間接的なリスクも。
ごくごくわずかな発生率(0.0005%〜0.02%*1)ではありますが、母体の下半身麻痺、呼吸困難、心停止などの重大な事故につながる、くも膜下麻酔になってしまったり、局所麻酔薬中毒、硬膜外血腫などがあげられます。

ただこれらは、起こる前に、もしくは起きてしまったらすぐに、適切な対応ができればこのような大事には至らないらしい。

よって、もしも私が、無痛分娩を迷っている妊婦さんから相談されたら、「ホームページや口コミなどで、【産科医だけでなく、経験豊富な産科麻酔科医、または麻酔科標榜医(麻酔でトレーニングを受けた医師)がいる】【助産師さんら医療者が無痛分娩と蘇生対応に精通している】【無痛分娩件数の多い施設】などを調べた上で、そこの先生とじっくりお話されてはどうでしょうか。」とお話しすると思います。

「逆にそのような施設が近くになければ、私なら無痛分娩を選択しないと思います。」

また、まちがっても、「痛みを感じてこそお産!」などと前時代的なことは言わないようにしています。

無痛分娩の初歩的なことはここのページで知ることができます。

●日本産科麻酔科学会 無痛分娩Q&A →こちら

<参考>
*1)メディカ出版Webセミナー「安全な無痛分娩のための助産師によるアセスメント」
*2)厚生労働省のウェブサイトに掲載を希望した無痛分娩取扱施設の一覧(東京都)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000347247.pdf