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光毒性のある精油のリスクマネージメント

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  • 投稿の最終変更日:2022-04-16
  • 投稿カテゴリー:blog

妊婦さんに好まれる精油のひとつ、柑橘系。

以前、産婦人科の待合室でアンケートを取ったことがあります。

0(苦手)・・・10(大好き)

無作為にお声がけした妊婦さんにレイティングしていただいたのですが、柑橘系のいずれの精油も平均値が9以上となりました(n=55)。つまり多くの妊婦さんが「柑橘系の精油は全般的に好き」なことが数字からも見ることができました。

しかし、柑橘系の精油の多くには「光毒性」が含まれます。精油に含有しているフロクマリン類が皮膚に付着すると紫外線吸収を高めて、赤みや湿疹ができたり、色素沈着を起こすという性質です。

光毒性を含む柑橘系の精油は「精油の安全性ガイド2014」によると、

ベルガモット、ライム、レモン、 グレープフルーツ(いずれも圧搾法)などが挙げられます。逆にオレンジスイート、マンダリンには影響を及ぼすほどの光毒性はないとされています。

中でもベルガモットは光毒性が強いフロクマリン類のbergaptenを多く含み、1%濃度のベルガモットを塗布後、時間経過ごとに紫外線による皮膚刺激を調べた研究では、2時間後に刺激のピークとなりその後6時間まで続きます。2.5%だと8時間まで続きます。(Zaynoun ST, 1977)。 これは刺激の差はあれど、他の光毒性を持つ柑橘系にも当てはまります。

せっかく多くの妊婦さんが大好きな香りなのに、これらの精油を使えないのは残念・・・と諦めてしまう前にリスクの少ない使用方法を考えていきます。

♦FCF(フロクマリンフリー)、水蒸気蒸留法の精油を使う
原因となる成分を取り除いた精油を使う。レモン、ライムなどは水蒸気蒸留法でフロクマリンが留出されないとしている。ただしフロクマリンの含有量の多い精油は留出する可能性も指摘されている(沢村ら,2016)ので、ベルガモットはFCFを使う。

♦紫外線対策
紫外線照射により活性化されるので、UVカット効果のある衣類を着たり、日焼け止めクリームなどを塗ることで防ぐ。光毒性は表皮の下の真皮層で反応するので紫外線が届かないよう遮断する。

♦希釈率を考える
香料の安全基準を提唱しているIFRA(国際香化粧品香料協会)の自主規制では、たとえばベルガモットは0.4%以下なら光毒性はないとされている。また濃度0.5%のベルガモットでは皮膚刺激は出なかったという報告もある(Zaynoun ST, 1977)。

<IFRAによる基準値>

  • ベルガモット 0.4%
  • ライム(圧搾)0.7%
  • レモン(圧搾)2.0%
  • グレープフルーツ(圧搾)4.0%

以上を踏まえて、妊婦さんのアロマトリートメントで柑橘系の精油を使用するときは、

もともと光毒性のないオレンジスイートやマンダリンを使用するか、ベルガモットならFCF、グレープフルーツやレモンなら水蒸気蒸留法の精油を用意しておく。それらの精油がサロンにないときは、光毒性のある精油の含有量は0.5%以下にして(たとえば、フルボディで使用するなら、30mlのキャリアオイルに対して、ベルガモットは3滴以下、ベルガモットとライムを使うなら合わせて3滴以下)、お帰りの際には紫外線予防に日焼け止めクリームを用意したり、UVカットの衣類の着用や遮光の日傘をお願いする。

こんな感じなら、より安心して柑橘系の精油を楽しむことができると思います。

参考文献

  1. Tisserand,R., Essential Oil Safety 2nd edition, フレグランスジャーナル社 2014
  2. 沢村正義他, 精油中のフロクマリン分析, アロマセラピー学雑誌17(1)2016