初夏のような陽気で、草花が青空に映えて本当にきれい〜♪
でも、きっとあっという間に梅雨が来て、蒸し蒸しと暑い日々になってしまうんでしょうね。(←ネガティブな思考回路)
先日、マタニティトリートメントを取り入れているサロンで働くセラピストさんから、さすがにまだ時期尚早だよって思われる真夏の怪談話を聞いてしまいました。
「マタニティトリートメントは、背中はなんとなく怖いので、足だけやってます。60分の仰臥位(上向き)で!」
実はこれに似た話を聞いたのは初めてではないんです。ひぃーーー
マタニティトリートメントに携わるセラピストなら絶対に知っておかなければいけないキーワードの一つに「下大静脈」があります。体の中の一番大きな静脈で、足から戻ってきた血液が骨盤内で一つに集められて、心臓に帰っていく重要な静脈です。脊柱右側に沿って上行しています。
妊娠後期(人によっては妊娠中期からでも)になると、仰臥位で寝るとお腹の重みでこの下大静脈が圧迫されて潰されてしまいます。イラストの赤丸のあたり、下大静脈が走行している部分に最も荷重がかかります。
するとどうなるか・・・
心臓に戻る血液が滞ってしまうので、当然心臓から送り出す血液量も低下します。その結果、「仰臥位低血圧症候群」を引き起こします。症状としては、気持ちが悪くなったり、頭が痛くなったり、冷や汗が出て、顔面蒼白になり、ひどいと嘔吐する妊婦さんもいます。
これは人によっても、また同じ人でも日によっても異なるので、「自分は妊娠中ぜんぜん平気だったから、みんな大丈夫☆」など安易にn=1で考えないでください。マタニティトリートメントの根底には安全性があることが大前提です。
なので、トリートメントでは仰臥位の時間を極力短くすると同時に、下大静脈への荷重を減らす工夫をします。
大腿部の付け根から膝下辺りまで大きめのクッション、下腿にも枕やロール状にしたバスタオルを入れ込むと、下大静脈への荷重が減圧されるので安楽なポジショニングになります。もしもベッドがギャッジアップできるタイプなら30度ぐらい背上げすると横隔膜も動きやすくなるので尚良いです。
↑これは介護看護用具のアイソネックスさんの測定画像ですが、このように的確にクッションを使ったポジショニングにすると、さきほどの赤丸あたりの荷重は分散されているのがよくわかります。この測定は妊婦さんではない一般の方なので、妊婦さんならもっと変化が見られると思われます。(アイソネックスさんでは色々なタイプ、形のクッションが売られているので、妊婦さん以外にもポジショニングを考える必要があるクライアントには役立ちそう!)
というわけで、「背中の施術は怖いから」という知識しかないサロンはそもそもマタニティトリートメントを行うべきではないし、仰臥位60分など血も凍る(もとい、滞る!)施術はしないようにしてくださいね。
<画像参考>
ポジショニング実践ハンドブック(アイソネックス)