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妊娠中のよもぎ蒸し

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  • 投稿の最終変更日:2024-03-17
  • 投稿カテゴリー:blog

立春を過ぎたとはいえまだまだ寒い毎日ですね。今回はこんな季節にぴったりの温か〜い「よもぎ蒸し」を妊娠中にうけたらどうなのか、考えてみたいと思います。

日本ではすっかりお馴染みのよもぎ蒸しですが、グローバルレベルではまだまだマイナーな民間療法なので、その効果についての質の高い研究論文はほとんど見当たりませんでした。

なので一旦、販売元のホームページ、実施している店舗、個人のブログなどから拾ってみると、

  • 血行促進
  • リラクゼーション
  • ストレス緩和
  • 疲労回復
(ふむふむ。)
  • デトックス効果
  • ホルモンバランスの調整
  • 自然治癒力が高まる
  • 免疫力アップ
(…おふ。)
  • 生理痛、生理不順、更年期障害の改善
  • 不妊治療
  • 貧血の改善
  • 膣の引き締め
  • 子宮や膣のクレンジング
(…うっ。)

などたくさん出てきました。( )カッコ内は私の心の声が漏れただけですので聞き流してください。

くどいですが上記には科学的根拠はないです。よもぎ蒸しに限らず根拠のないウェルネスビジネスは、病気の治療をアウトカムにするのではなく、女性性の解放などもっと意識面にフォーカスすればいいのになと思っています。

または、自分の体を労わろうというようなライフスタイルの提案とか。

そもそも薬機法、医師法、景表法あたりに触れるのではないでしょうか。

Cleveland Clinicのヘルスエッセンシャルニュースの中で、Dr. Crawfordが「よもぎ蒸しによる蒸気は子宮頸管や子宮までは届かず、外陰部に到着するぐらい」と断言されていました。子宮に届いていないとはちょっとびっくり!

(Cleveland Clinicはアメリカにある臨床、医療・創薬の研究、教育までの複数領域を扱う非営利のメディカルセンター)

また、よもぎ成分の科学的な健康効果は証明されてなく、経皮吸収されて血液中に巡るのかどうかも分からないとも。

ただこれに関しては、ネットのよもぎ蒸し界隈では、Feldmannの文献を引用して「陰部は薬理成分の吸収率が良いからよもぎ成分は経皮吸収される」という主張が多かったです。(Feldmannの文献はステロイド軟膏の吸収率が腕に比べて男性の陰嚢だと42倍だよ、というもの)

では妊娠中のよもぎ蒸しはどうでしょうか。

これはもう前出のDr. Crawfordをはじめ、多くの科学者がその危険性を唱えています。

理由としては、これと一緒で、まずもともと高温期の妊娠中なのに、さらに体温が上昇してしまうことがあげられます。

過去に外陰部のやけどの事例もあるので、万が一妊婦さんがやけどをしてしまったら、経膣分娩も難しくなるのではないでしょうか。

そしてよもぎ成分を構成するケトン類のツヨンには神経毒性、麻痺性があります。もしもネットで言われるように子宮にまで届くなら、痙攣作用による子宮収縮も懸念されます。

膣には自浄作用があるので、「膣のクレンジング」なるものは不要どころか、pHが変わり、膣炎やガンジダ感染症を引き起こすこともあります。におい、分泌物が気になるなら産婦人科で相談するのが膣の健康には最も有効な手段です。

ちなみに、妊娠中に膣用ジェル(vaginal gel)を使用することは早産のリスクが上がると言う文献もあるので要注意!

というわけでまとめると、

よもぎ蒸しは温か〜くて気持ちよいけど、過度な効果を期待はしないでね。あと妊娠中はやめとこうね。

という感じでしょうか。

 

参考文献

Cleveland Clinic, 2022 April 18 “What Is Vaginal Steaming and Is It Safe?”

Tycho Vandenburg, An International Journal for Research, Intervention and Care 2017:19(4), “Basically, it’s sorcery for your vagina’: unpacking Western representations of vaginal steaming”

Laura E Janssen, PLoS ONE 2022 Jun 30;17(6), “The association between vaginal hygiene practices and spontaneous preterm birth: A case-control study”

RJ Feldmann, J Invest Dermatol 1967 48(2) 181-183, “Regional variation in percutaneous penetration of 14C cortisol in man”